さんぽみちのちしつColumn

第7話 ~幻の立谷川温泉~

2021年03月31日(水) 

 山形盆地は奥羽山脈と出羽山地に挟まれた地溝盆地である。「地溝」とは、両側が断層で境されて落ち込んだ溝状低地である。今まで山形盆地の「断層」については、盆地西側のものばかり説明してきた。それらと対になる盆地東側の断層については、年代が古く堆積物も多いためあまり明らかになっていない。ここで私見の一端を述べたい。山形盆地を南から斜めに眺めると、山形市山家地区裏の丘陵~天童市舞鶴山~村山市土生田地区の山地の縁が見事に一直線に並ぶ。(図の赤線)また、天童市の貫津付近と東根の旧市街付近にもおぼろげな線状構造(東根谷,貫津谷と示した青線)があり、山形市高瀬地区と宝沢地区にも同方向の線状構造が並んでいる。天童温泉と東根温泉は二線の交点近傍に当たるがこれらの線状構造と温泉との関連性は何かあるのだろうか?


以前私は「盆地内部でも地表近くの高温の温泉は火山性である」と述べた。東根温泉も天童温泉も僅かな深度で高温の温泉を得ている事より、共に熱源は地下深部の火山熱であると推測できる。であればその直下には熱水が上昇する隙間がある事になる。連続した鉛直方向の隙間と云えば断層である。構造的に考えれば、盆地を縦貫する“赤”断層は初期の奥羽脊梁山脈の隆起運動、斜交する“青”断層は後の北側への変位を含む脊梁の隆起によるものと考えられる。つまり、閉じかけた地下深部の古い主断層を、強引にこじ開ける斜めの断層変位が生じて隙間が発生し、その真上に、天童・東根温泉が開湯したと考えられるのだ。


では併走する高瀬谷と宝沢谷の延伸方向には温泉の熱源はあるのか?結論から言えば高瀬谷の先(立谷川工業団地付近)では、熱源はあるが河川の浸透水が豊富なため途中で熱水が拡散してしまっている状態、宝沢谷延伸部は新たな岩脈(流紋岩の小山)で閉塞された状態とみられ共に期待は薄い。(但し、岩脈自体も幾ばくかの熱は持っている)
以上はあくまで私論に過ぎないが、地下水や温泉や地形や地質から「なんでだろう?」と日々疑問を持ち推考する姿勢が、地下を相手にする我々に特に必要な心がけではないだろうか。

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