さんぽみちのちしつColumn
第5話 ~白岩楯と陣ヶ峰~
2021年03月31日(水)
寒河江市白岩に「楯」という地区があるのをご存じだろうか。もともと楯と云う地名は昔の城館を指し、これは当社の立地する「本楯」にも通じる。白岩の楯は、現在の白岩小学校の北西側、白岩主部を見下ろす高台にあり、江戸時代に「白岩城」があったとされている。この楯地区は平地が高さ40~50m程度の小山をぐるっと一回りした環状平地(ハット型地形)という極めてヘンテコな地形をしている。場所的には葉山から流れ下る実沢川の下流部で、すぐ南側は白岩市街地へ落ち込む崖となっている。何でこんな崖の上に珍妙なまあるい平地が形成されたのだろう?
実はこの地形、寒河江川と支流(実沢川)の変遷と特徴ある地質構造によって生成した特殊な段丘だと思われる。最初(おそらく十数万年前)、小山の西~南側を流れていた実沢川が、本流の寒河江川の下刻(洗掘が進んで河床が下がる事)によって、より軟質な小山の北~東へと流路を変えた。そして次第に実沢川の侵食が進み、結果、周辺が崖の上の環状平地として残されたものと推察される。付近の地質は粗粒で軟らかく浸食されやすい地質(凝灰質砂岩)を主としているが、その中に、細粒で硬く浸食されにくい部分が帯状・島状に点在している。付近の実沢川の流路の蛇行具合を見れば大まかな地層の硬軟が見て取れる。つまり、河川はこの硬い部分を避けながら浸食していったため、このような変な地形が生成したのである。
実は河川の下刻によって高台の平地が残存した地形は、寒河江川流域では珍しくない。代表例としては慈恩寺の西側に接する陣ヶ峰台地が挙げられる。陣ヶ峰も寒河江川岸に接した高い孤立した段丘であり、当初近傍を流れる田沢川下流の開析面であったものが、寒河江川の下刻とともに崖上にポッンと残されたものである。
河川の流れはその流路周辺の地形・地質によって流転を繰り返す。障害物を乗り越えたりかわしながらもただひたすら大河を目指し流れ下る。そのひたむきさは人生の歩みにも似ている気がする。まさに「川の流れのように」である。
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