さんぽみちのちしつColumn
第6話 ~花崗岩はツンデレ?~
2021年03月31日(水)
朝日山地の峻嶺(しゅんれい)は「白亜紀」(約6500万年前)に地下深くでマグマが固まった花崗岩である。(注:県外では古生代の古い花崗岩もある)地下水を開発する者にとってこの花崗岩、不倶戴天の敵であり、硬くて掘りにくく、苦労して仕上げても水が出ないと云う踏んだり蹴ったりの結果となることが少なくない。ところがである、トンネル技術者に言わせると花崗岩は、水に恵まれた地下水の豊富な岩盤だと云う。この認識の違いはなんなのだろう?
花崗岩という岩石は造山運動によって大きく隆起し地表に表れている。造山運動というのはプレートの動きで地殻が圧迫され、シワが寄って盛り上がるような現象である。軟らかな岩盤では左右から圧迫されてもしなやかに地層がうねって力をかわす。(これを褶曲という)しかし花崗岩は強情なので、限界まで我慢した後、突如として大きな断層を伴って地盤が破断する。なので朝日山地などの隆起山脈は、山列の両側に幾本もの大きな断層を伴っている。
花崗岩は強靱なため細かな亀裂は入りにくく、代わりに断層などの大きな亀裂・裂け目が疎ら(まばら)に発達する。雨水などによる地下水涵養は岩盤表面からの浸透水が少なく、その分大きな亀裂面に地下水が集中して貯留する事になる。
このように、希に存在する急角度の亀裂面に鉛直な水井戸を掘削する場合、井戸の適切な深度で地下水を包蔵した亀裂に“遭遇”しないと水は得られない。ところがトンネルは山脈を横に貫く工事であるため、否応無く何ヶ所もの断層を貫く事になる。その中で地下水を多量に溜めた亀裂(断層)に当たると、突如として大出水の事故が起こる訳である。何と言うことはない、井戸とトンネルではこういった亀裂に遭遇する頻度と確率が違いすぎるのだ。
兵庫・六甲(~のおいしい水)、山梨・白州(南アルプスの~)に限らず、花崗岩地帯のわき水は非常に清冽で美味しいことでも有名である。我々にはツンツンと冷たい岩だが、自然の摂理の中では皆にやさしいうるおいも与えている。
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