さんぽみちのちしつColumn
第16話 ~まほろばの巨大な○~
2021年07月09日(金)
高畠町の南部、亀岡文殊のある山地の背後に高畠町上和田がある。周囲をぐるっと山々に囲まれた山間盆地で、直径が約3㎞ほどの円形の地区である。地区内はほぼ平坦で「上和田有機米」を作付けしている水田が広がり、所々に低い小さな丘陵が点在している。
この上和田地区、地形的な特徴より古いカルデラ(爆裂火口)と考えられている。カルデラにはいろいろなタイプがあるが、この上和田カルデラのように平坦で周辺が丸くカルデラ壁で囲まれているタイプは、陥没カルデラと呼ばれる。陥没カルデラは爆発的な火山活動によって地下のマグマが放出されて空洞になり、その空洞に向かって周辺の岩石が落ち込んで大きな凹地になったものだ。よく爆裂火口というと、火山が大噴火を生じた火口の「穴」というイメージを持たれるが、直径3㎞の巨大な一つの火口があったわけでは無い。実際は、数箇所の小さな火口が噴出して、噴火後その周辺がまとめて陥没したものである。また、カルデラ内に点々とある小さな丘は、火口丘と呼ばれ、カルデラを形成した後にできた小さな後発の火山跡であり、ここで大規模な火山活動があった名残と言える。
奥羽山脈の周辺や出羽山地などの火山地帯には、一見ただの小さな山間地のようなカルデラが多数存在する。この高畠町上和田のほか、山形市西部の県民の森付近・大蔵村肘折・最上町向町・金山町有屋など、ハッキリしたものだけでもその数10を越える。その他古くて地形が不明瞭になったものや平野部の深部に埋没してしまったものなど、過去のカルデラが多数存在する。陥没カルデラの地下はかつての空洞が雑に埋まった状態なので岩石の密度が低く、周辺部より僅かに重力が小さい。(これをブーゲー異常と言う)重力の僅かな差を丹念に調べると、今は全くの平野部でも重力の高いところと低いところが表れ、それを手がかりに、かつての地形や地下深部の地質を推定することができるのである。
高畠町は「まほろばの里」とも言われる。まほろばは古語で理想郷・桃源郷の意味であるが、なんとなくこぎれいで豊かな土地という印象がある。確かに高畠町は古代の史跡群や神社仏閣などの旧跡が多い古い歴史の町であるが、高畠ファームやセゾンファクトリーなど、地味な農産品をおしゃれな商品に昇華させた地元企業の力も町のイメージ作りに一役買っている。
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