2023 12月 08のアーカイブ
第41話 ~刻まれた大地震の記憶~
山形市の郊外、西側に膨らんで流れる須川のさらに外側、玉虫沼や県民の森などが広がる丘陵地群とに挟まれた地区を「山辺段丘」と呼ぶ。地名的には山辺町山辺から山形市村木沢・門伝・本沢と連なるエリアだ。地形は丘陵地の山すそに、半ば食い込むように広がる小規模な平地~緩傾斜地の集まりとなっている。丘陵地は白鷹山を頂とする隆起地形で、月山や鳥海山などと同じ出羽山地に含まれる。また富神山や大森山など、特徴的な三角形に尖った山々は、古い時代に活動した貫入岩と呼ばれる一種の火山である。
山辺段丘では、丘陵地から発して須川に注ぐ数多くの小河川が地区を横断して流れている。その個々に小規模な扇状地が造られ、隣接する河川と折り重なるように連続した堆積平野を形作っている。一般には、河川が生成した堆積地が再び河川の流れで浸食されて残った地形を段丘と呼ぶ。当地の場合、多くの河川が相互に影響しあったため、全体的には複合開析扇状地と呼ばれる地形となっており、これも段丘の一つの形態である。小河川毎に土砂の供給能力や堆積地の規模が異なるため、砂礫台地や多彩な扇状地、浸食谷及び湿地性の低地まで様々な地形が入り組んで分布している。
この地区のもう一つの特長として断層の影響が挙げられる。当地には、県内最大の活動度を有する活断層(山形盆地西縁断層帯の山辺セグメント)が潜在している。その変位速度は1.4m/千年、活動する間隔は平均1.9千年だそうだ。また、将来活動確率は、向こう30年で2%と推定されている。これをアブナイと感じるかまだまだ大丈夫とみるのかは個人の判断だが、もし今度動いたら阪神淡路大震災級の直下型地震が発生する事になるらしい。
今から130年ほど前、岐阜県で発生した日本最大級の内陸地震「濃尾地震」では、山間の水田を斜めに横切るように垂直変位6m、横ずれ4mもの断層崖を生じた。これは書籍や雑誌などで何度も取り上げられ、社会の教科書にも写真が載っていたので覚えがある方も多いだろう。くだんの山辺段丘の地形もよく見ると、地表勾配と直交して線状に延びる、おびただしい数の傾斜の急変点や段差・小崖などを見いだせる。その一つ一つが過去に発生した断層の変動によって生じた、言わば大地震の記録である。
人間の一生など活断層の活動間隔から言えばほんの一瞬でしか無い。たびたび大地震が発生してきた三陸沖でさえ、東日本大震災ではろくな対策が取れなかったのだ。そして今後、科学技術がいくら発達したとしても、地震の発生を正確に予測することは難しいだろう。いつ発生するか分からない大地震を過度に恐れる必要はないし、その対策や備えも本当に有効かどうかは怪しいが、いつ来てもおかしくは無いという認識や覚悟は必要だろう。
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